ハイスペック・バカ

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前世占い

 飲み屋のカウンターで隣に座っていた物憂気な女性が僕に話し掛けてきた。
「前世って、信じますか?」
 宗教の勧誘が始まるのだろうか。至って無宗教の私はこの手の話にひっかかった事もないし無視することにしている。
 しかし話し掛けて来た時に目を合わせてしまった。しまった。相手は私の目を見たまま、その大きな目をうっすらと細めて微笑んだ。もはや合った目を逸らす事も出来ず、返答してしまった。
「いや、あまり…信じてはいませんね」
 女性はその潤んだような瞳の先を私に合わせたまま、少しだけ首をかしげ、そして少しだけ顔を私に近づいて話を続けた。ああ、ヤバいかも、と軽く後悔をすると同時に、こんな人と話が出来るなら多少のリスクも甘んじて受けてみようという気にもなった。一般的にはそれをカモと呼ぶのだが。
「私の前世、蛙なんです」
 …カエル?
 それが雨の日によく鳴く両生類を差す言葉であることを理解するのに数秒を要したのは、綺麗な女性の口から、しかも前世という話からいきなり両生類の一般名詞が出てくるというのがどうしても繋がらなかったからだった。普通前世とかって戦国大名とか海外の貴族とか、とにかく人なんじゃないのか?最近の前世占いはもう森羅万象あらゆるものが対象になっているのか?
 その数秒の間を、視線をあげてふらふらさせながら考え、答えが出たところで女性に視線を戻す。が、目を見たらまた自分がどうなってしまうかわからなかったのであえて視線を下げてみたところ、胸元の大きく開いた服と、そのせいでやたら強調された、正中線に出来ている見事な谷間の線に気付いてしまい、こっちはこっちで自分がどうなってしまうかわからなかったので結局また目が泳いでしまった。まだウィスキーの残っていたグラスを手に取り、少しだけ口に含む。視線をグラスに集中することで何とか落ち着き、口の中の酒を飲み込んでから話を続けた。
「蛙というと、アマガエルとか、トノサマガエルとか」
「はい。なにガエルかまではちょっとわからないんですけど…」
 わりと小洒落た店のカウンターで背の高いストゥールに座った男女が交わす会話としてはこれほど似つかわしくないものもないが、そもそも前世を信じていない前提で話を振られ、しかもカエルでございますと言われて気の利いた返しが出来るようなら私は芸人にでもなっているだろう。もう次に何を言い出すのかまったく予想出来ない。「だからお前は死ね」とか言われても納得しかねない。いや死ぬのは全力でお断りするが。
「昔から変な口癖があるんです」
「口癖?…どんな?」
 長いまつげで瞳が隠れるくらい顔を落とし、少し迷っているような表情を見せたが、ゆっくりと私の方を向き直し、やがて真っ赤な唇が、動いた。

「ゲロゲーロ」
「それ蛙じゃなくて青空球児師匠です」




(注:師匠生きてます)
    17:12 | Trackback : 0 | Comment : 2 | Top
Comment
2006.09.12 Tue 17:22  |  ヌルカン #-
はじめましてこんにちは。
このエントリー、大好きですわ。
  [URL] [Edit]
2006.09.12 Tue 22:27  |  sing #-
はじめまして。
いつも読ませていただいております。
この手のネタは大概リアクションが皆無なのでそういっていただけると書いたかいがあったというものです。ありがとうございます。
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