ハイスペック・バカ

「アリクイのいんぼう」感想文


 何年か前に実印を作りました。
 出来上がって来た判子は、とても大きく、太く、材質もしっかりとしていて、樹脂で覆われてゴムで文字が彫られたシャチハタ印とは当然違いますし、認印とも全く違う堂々たる風情に、しばらく眺めていたのを覚えています。そんなに高いものではありませんが、それでも実印を持つという事の意味を考えると少しだけ気が引き締まる思いがしました。

 考えてみれば判子を作る時……つまり何らかの書類に判子を押す時というのは、割と人生におけるなんらかの岐路に立っている時というのが多いんじゃないでしょうか。
 大きな買い物をするとか、個人情報が大きく変化する時とか、身分証明をする時とか、バポナを買う時とか(2017年現在は不要だそうです)。
 
 判子にまつわるお話というのは、意外と複雑で、面白い話が多いのかもしれません。
 特に店主が普通とちょっと違うお店なら、なおのこと。

 先月の8月25日に鳩見すた先生の新作「アリクイのいんぼう」が発売されました。いんぼうです。淫謀と書くとアリスソフトのDPS SG1に入ってた信長の淫謀を思い出します。初めてプレイしたアリスソフトのゲームです。同じグラフィックで全く違う二つの話が楽しめるという面白い構造になっていましたね。エロゲーなのでお得感よりはむしろ「結局同じ絵なのかよ!」感がありましたが。
 まあ古のエロゲーの話はどうでもいいですね。
 アリクイのいんぼうです。
 川沙希という町で、アリクイが印房兼喫茶店を営んでいるのです。
 なぜアリクイなのか、という事については特に言及されません。もしかしたらアリクイに見えているのは自分だけなのかもしれないし、そもそも目に見えているこの世界が本当に自分が見えている形になっているのか。本当の自分はどこにいるのだろうか。
 そういう話じゃありません。
 アリクイは、判子を彫ります。あと珈琲を淹れたりミルクセーキを作ったりケーキを焼いたりします。
 お店にはカピバラがいたり小説を書く鳩(!)がいたりします。
 ウェイトレスはロップイヤーのウサギ耳を付けた女の子です。

 そんなお店に、色々な事情をかかえて判子を作ろうという人がやってくるお話です。
 大きな事件が起こったりするわけじゃありませんが、その人達にとってはとても大事な問題がちょっとずつ解決します。具体的にアリクイさんや判子が何か解決に導くわけじゃありませんが、それでも確実に物語の中心にアリクイさんがいます。この辺のさじ加減が凄く好き。それでも毎回ちょっとした謎や気になる所があって、それが気になって先を読み続けてしまうのです。毎回主人公が違うおかげで文体もそれぞれのキャラクターに合った雰囲気になっているのも素敵。ちょっとずつ文章のリズムが違うんですよ。根底にあるものは同じなんですけど、それぞれ編曲の方向性をちょっとだけ変えてあるみたいな感じで。ベースにしている楽器の違いのような。音楽詳しくないのになんで音楽で例えようとしてるんでしょうか私は。
 
 最初のお話は不動産屋で働く女性のお話。
 このお話の好きなところは女性がちゃんと自立した女性である所。仕事は出来るけど無理して男性に負けないぞって感じの意地を張るタイプでもなく、適度に愚痴って適度に仕事を楽しめている感じ。人生の優先順位で仕事が高めな感じがします。というか実際そうで、おかげで結婚とかしてないけど本人はそこまで困ってない。割と今時の働く女性像って感じがします。感じって言葉を何度も使いすぎだ。
 実印についてのちょっとした知識が得られたりします。
 
 次のお話は奥様に先立たれた男性のお話。
 思い出の詰まった家を売るために判子を買おうとしてアリクイさんのお店にやってきます。今作で一番萌えるのはある意味この方かもしれません。先立たれた奥様に本当に愛されていて、そしてとても上手に手玉に取られている所。家の中で見つからない捜し物の意外な隠れ場所と、その意味を知ったとき、その深い愛情に涙すること請け合いです。あんまり泣けるとか書くと安っぽくなっちゃうかもしれないけど、意地っ張りなおじさんが意地を張りながらも亡き妻の愛を受け入れる所は本当に素敵なシーンです。
 ピザトーストは夜中に食べるのが一番美味しいよね。あとピザソースじゃなくてケチャップを使うのがいいんだよね。
 
 次は夢を諦めた女性のお話。
 音大とか美大っていうのは、まあ夢を持って入学して膝に矢を受けて出て行く所だとは思うんですが、このお話の主人公も例に漏れず。
 しかし諦めた途端に夢見る若者と知り合ってみたり、その若者の秘密を知ってみたり、そして彼の想いをちょっと後押ししてあげたり。これから辞める人がなんでそんなに夢ある若者に対して優しく出来るのかなと思う所かもしれませんが、多分彼女は本当の意味で夢に対して絶望しているのだと思います。だからこそ出来る事かなと。焦ることも羨む事もなく、純粋に困っている人に手を差し伸べている。生来の人の良さに加えてそういう部分があるのではないかなって。
 先日、ホットケーキミックスを炊飯器にぶち込んで早炊きにしてみたら思いのほか膨らまずに蒸しパンみたいな食感になりました。あんこは入れてません。
 あとシャチハタ不可の意味がわかったりします。
 
 そして、最後のお話は、これまでの全てのお話が上手に繋がる、とあるお話。
 連作短編で、お話ごとに主人公が変わるオムニバス形式なのですが、全ての登場人物はこの巻の中でどこかで繋がっています。他の話でカメオ出演する事もありますし、実はちょっと重要な人物として再登場したりなんかもします。読み返してみるとあの時のあの人はこの話のあの人だったのか、という事がよくわかります。こういう複雑な構成は二度三度と読み返したくなるからずるいですね。
 なんと後書きまで本編に伏線が張られているというこだわりようです。
 
 所で、メディアワークス文庫はライトノベルではなく一般文芸レーベルの扱いなのですが、特に女性読者の比率が高いそうです。電撃文庫のアッパーバージョン扱い(怒られそうな表現)なのに読者の性別比率が反転しちゃうのも面白いですが。
 なるほどこの作品も若い女性が好きそうな、という言い方は語弊があるかもしれませんが、少なくともライトノベルのような男子中高生が夢中になるお話ではないと思います。ちょっとした日常と、そこからほんの少しはみ出した非日常が絡み合った「ほろり笑いの物語」(裏表紙より)。休日の昼下がりに陽の光の入る部屋とか、お気に入りのカフェの席とか、そういう所でお茶を飲みながらちょっとずつ読み進めるような、なんかそんなお洒落な光景が似合いそうな気がします。昔からすたさんの文章は嫌味のない小洒落た感じがあって、前にもこれ書きましたが都会の水を飲んでる人の文章だよねって思います。
 そういう意味ではメディアワークス文庫には凄く合ってるのかもしれない。イラストの可愛さと読みやすくて小気味良いリズムの文章。
 今回もオススメなので読むとよいです。Kindle版も出てますし。
 
 
    01:22 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

HGアスタロト改完成

 過去作の中でもお気に入り。
 HGアスタロトです。左右非対称っていいよね。細かく弄ってます。

ast-001.jpg
    12:10 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

ガガンガン、クラタスモデルを塗ってみた

 今回はプラモデルではないんですけど、まあ模型ではあります。
 タカラトミーから発売されたガガンガンのクラタスモデルです。
 塗装してみました。
kura-001.jpg


    12:14 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

レジェンドBBスペリオルドラゴン完成

 まだ続くぞ過去作品シリーズ。
 今回は部分塗装だけど。
 レジェンドBBのスペリオルドラゴンです。全身メッキのイカす奴です。
 これも2016年6月頃に作成しました。
spe-001.jpg
    12:30 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top

ジム・グラップラーカスタム完成


 過去作品まだあった。
 数年前にサフ画像をアップして「完成させる目処が立っていない」と書いたやつです。
 名前だけ先に思いついて、その後色々あってようやく作った「ジムグラップラーカスタム」。
 確か格闘特化のために地上での推進力を無理矢理上げて、一撃離脱する戦術を取ろうと考えたとかそんな設定。実機テストの段階で被弾率が高すぎて(当たり前である)正式採用されなかった、という感じのテストマシン。
 2016年6月頃の作品です。
gm-g-007.jpg






    12:38 | Trackback : 0 | Comment : 0 | Top
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毒蝮ワン大夫(又はヴァイ)

Author:毒蝮ワン大夫(又はヴァイ)
平和とHORIを愛するナイスガイ。
わりと衝動のままに生きるので日記の方向性が定まらなくて困る。

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