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ひとつ海のパラスアテナ 3巻感想(いちおうネタバレ配慮してます)


 ひとつ海のパラスアテナ、3巻です。
 タカが最初からいるので今回はネタバレ配慮で書き出す事にします。まだ買ってないんだよねって人は、まあ読めよいいからって感じですが、ちょっと今回の感想を読んで参考にしてもらえればなーと思います。思った事を適当に書き散らして行くスタイルなので参考にならないかもしれませんが。


 ようやく再会出来たタカとアキが、改めて出発しようとした矢先に発生した大事件。さっきまでそこにあったセジングフロートが海に沈んでしまいました。
 という、とてつもない引きで終わった2巻。
 アークへの鍵の事や、オルカの親の行方など、様々な謎を残して終わってしまっていましたが、今回、色んな意味で伏線は回収されます。完全に解決されないものもありますが、それでもこれから何をすべきか、という方向性が定まっただけでも進歩だと思います。
 さらに世界が一気に広まり、アフターというこの世界の謎の一旦を垣間みる事が出来ます。どこまで世界の謎に肉薄するのかはわかりませんが、これまでの話は序章だったのかもしれません、という位には広がりました。そしてゲーマーは今回ニヤリとするシーンが。僕はあのゲーム大好きでした。脱衣。


 今回は、今までよりも現代社会の悩みにちょっと近い苦しみが多いような気がします。それは、今までの話の多くがアキと海との直接対決が主軸にあったからかもしれません。もちろん今作も海との戦いではあるのですが、話が進むにつれて、どんどん知り合いが、仲間が増えて行って、アキの中で社会が形成されていきました。タカやオルカといった家族に近い仲間だけでなく、ドリルさんやシマさんなどの関係者、シーロバーなどの敵対する人など、どんどん世界が広がっています。人が増えれば対人関係の悩みが増えます。アキは今まではメッセンジャーとして一人で暮らして来たので、「すれ違う」人は多くいたでしょうが、「かかわり合う」人はあまりいなかったのかもしれません(描写がないだけで仲の良い人がいなかったとは思いませんが、少なくともタカのように彼女の心の中に悠然と居座る人はいなかった可能性は高いと思います)。
 アキが少し大人びたのではないか、というような事をタカが劇中でぽつりと言い出すのですが、それは環境の変化によるものが大きい気がします。
 今回もまた、海の怖さを思い知る部分があるわけですが、そこも今までとまた違った苦しみがアキを襲います。毎回よくもまあ違った角度でアキを苦しめられるものだと感心させられますが、今回は「1巻の孤独と2巻の二人遭難を経ての孤独」というかなり深いところにきました。最初から一人である事と、人のぬくもりを知った上での独りは精神的なダメージが段違いですよね。自分で選んだ事なのに、つい人を恨んでしまうとか、僕もよくありますが、こういう弱さが描けるのが素敵です。アキはすごく強い子なんだけど、同時にすごく弱い子でもあって、その弱さを持っているからこそ強さが発揮出来るのだろうなって思います。オルカがアキに対して絶対的な信頼を置いているのは、前巻で一緒に居続けた事でその部分がわかったからじゃないかと。痛みや弱みを知らない強さは、自分が毒の沼地を歩いている事に気付かず歩いてしまう危うさがありますが、アキは少なくとも自分から死に急ぐような事はないはずです。結果的に死にそうになる事は多いですが。


 僕は以前から「物語の主人公というものは、周囲の運命をねじ曲げる能力を持った人だ」と思っています。絶対条件ではありませんが。
 そして、アキは見事にこの条件を満たしています。出会う全ての人の運命をねじまげてここまで来ました。今回も登場人物の大半の運命をねじまげます。彼女は決して「俺についてこい」というタイプの、リーダーシップを取る人ではなく、むしろ巻き込まれ型主人公に近いタイプだと思うのですが、その不思議な魅力で巻き込んだ側の人達を変えていきます。あんまり似たタイプのキャラがすぐに思い付かない、良いキャラだと思います。


 今回、舞台が海の底で、色々な潜水を行うんです。表紙のイラストもそれっぽいからこれくらいは(ネタバレ的に)いいと思うんですが。
 さすがに今回も細かい描写で色々な事を後で飲み屋で語ってドヤ顔出来そうな事がたくさん書いてあります。季節柄大変よい感じですね。海の底というのは、たった数十メートルでも絶望的な距離になります。簡単に上がれないし、助けに行けない。陸上なら走れば数秒でたどり着いてしまうような距離なのに、ただ下に降りるというだけでこれほど難しくなるとは。初期で「死ぬ時は死ぬ」という事を徹底的に叩き込まれた状態で続きを読むと本当に怖いんですよ。「安易な犠牲は出さない」という作風でもあるのですが、途中で誰が死んでもおかしくない状況が続きますんで、緊張感もかなり高いです。


 さて、この作品の真の恐ろしさは海の恐ろしさではなかったりします。
 作品中に散りばめられたフェティッシュ感溢れる描写なのです。今回も色々と凄い描写が満載です。何が恐ろしいかというと世界観に合致してるせいでその描写が浮き上がってこないのですよ。「アフターだからしょうがないね」で済まされちゃうわけですよ。体毛がほとんどなくなったとかサラリと書いてますけど五秒くらい考えたらわかると思いますがつまりそういう事ですよ。同時に水かきの事とか色々書いてあるせいで目立ちませんけど、ねえ。どういう事なの。最高か。

 百合的描写も完備。今回はもはやハーレム状態と言ってもいいくらいに。タカとオルカが「どっちがアキの正妻かを言い合う」シーンとかはもう、「読み方によっては百合っぽいかしら?」みたいな状況じゃなくなってます。百合でハーレムって書いちゃうとちょっとふんわりした雰囲気を想像しちゃうかもしれませんが(僕だけですか)、わりとガチです。愛と誠の岩清水くんくらいのガチっぷりです。
 どれくらいガチかというと、タカが言った台詞はこんな調子ですよ。
「あんた、私が何のために医者になろうと思ったか分かってる?私よりあんたが先に死ぬのが嫌だからだよ、一緒なら死ぬのは一緒」
 これが百合的にヒャッホイする部分なのはもちろんですけど、1巻の冒険と、2巻の再開を踏まえてタカが言う言葉ですからね。なんというか重みが違います。
 オルカも負けじとガチな台詞を繰り出します(シーンはつながってません)
「タカさんはアキさんを幸せには出来ません。だからパラスアテナには私が必要です」

 百合的に見ても相当なレベルですが、彼女らが経験した壮絶なサバイバルは、深い絆を生み出し、そして「相手のために自分に何ができるか」をプライオリティの最上位に持ってきているので、傍目にはハーレム状態に見えちゃうんですよね。タカとオルカの言い合いは、つまり「どうしたらアキがもっとも幸せな状況になれるか」であって、「どうしたら自分(タカ、またはオルカ)がもっとも幸せな状況になれるか」ではないんですよ。二人ともその観点で言い争っていて、そしてどちらも譲らない。この作品のこういうところが大好きです。3巻は前巻よりすごく好きだなって思ったんですが、この辺のくだりがツボに入ったのかもしれない。
 ちなみに僕自身は熱心な百合クラスタではないので、多分本物の百合クラスタな人が読んだらもっとすごく楽しめるんじゃないかと思いますよ。どういう感想になるのか、聞いてみたいかも。

 どうでもいいですけど1巻の感想に書いた「このままイースみたいになっていくのかしら」という言葉が、タカがそれっぽい突込みをアキに入れてて笑ってしまいました。あたらずとも遠からずって感じ。まあ、アドルみたいにシリーズ変わるたびに捨てていったりはしませんが。

 とりあえずラノベっぽくない事がむしろライトノベルらしいという逆説的な素敵作品、3巻も間違いなく面白いので読みましょう。Kindleにもなったので読みやすくなった、という人もいるんじゃないでしょうか。


 
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