ハイスペック・バカ

れんまん!はどうすればよかったのか。とか。

 ボーリングで対決する方法は二つあって、お互いが自分のレーンで得点を競い合うやり方と、一つのレーンで交代で投げ合うやり方があるそうです。
 前者の場合は自分の状態をいかに高めて行くかという、自分自身との戦いに近いものがありますが、後者の場合は一つのレーンであるため、色々なテクニックが発生します。特に顕著なのが「自分の投球時に如何にレーンのワックスを削り取って次に投げる相手の状態を崩すか」というテクニック。回転のかけ方次第でそういった事が可能になるそうで、場を「荒らす」事が技になるという面白い競技。今年の甲子園でやってた「カット戦法」みたいなものですね。
 この話は昔鈴木みそ先生の「おとなのしくみ」でキャメロットの高橋兄弟に取材に行ったときの回でお二人が話されていました。事実と違ったら高橋兄弟か鈴木先生に文句つけてください(逃げた)。

 で、本題。

 れんまん!という、漫画を即興で描くいわゆるリレー漫画を対決としてルール化してプロに戦わせるという凄い番組がNHKで放映されています(不定期)。
 8月9日に島本和彦先生と藤田和日郎先生の対決という、物凄い対決が行われました。今、漫画界で(実在の漫画家同士の)ライバルとか因縁の対決とか言われて真っ先に思いつく二人ですよ。熱い対決ですよ。見るしかないわけですよ。観た訳ですよ。凄かったわけですよ。
 さらに夏コミでは島本先生がそのれんまん!対決のレポート漫画を頒布されていたのですよ。熱い漫画ですよ買うしかない訳ですよ。ガタケットで委託されてたので買った訳ですよ。読んだ訳ですよ。

 という感じで面白すぎたれんまん!について語りたいので、まだ観てない人は続きをクリックなさいませんようご注意ください。
 結果から言うと4-0で藤田先生の勝利となりました。
 1コマ目を藤田先生が描き、流れと世界観を掴んでしまったために、終始島本先生が「受け流す」形で進行する事になり、審査側が期待していた島本節とも言える自作品特有の熱い展開を繰り広げる事が出来ずに最後まで藤田先生にリードされる形で終わってしまった、ような印象を受けた人が多いと思います。

 島本先生は正統派ストロングスタイルの、正しく漫画を組み立てて完結させようという考えで挑み、藤田先生は(多分島本先生のレポート漫画の影響でそういう印象になっちゃったんだろうけど)ヒール的な審査受けの良いテクニックとリレー漫画で自分に有利に話が進む技を駆使して挑んでいたように思います。
 こういう形になると、その場の派手なテクニックなどが判定に有利になりやすくなるのは仕方がなく、さらに協議による判定ではなく審査員それぞれがその場の印象で判定する方法では、漫画を「読む」時間もあまり取れずに不利になりやすいのではないかという気がします。
 同人誌で島本先生が「れんまん!は『漫画力』の勝負であるので、絵に関するテクニックで判定が揺れるのは勝負の骨子からずれるのではないだろうか」というような発言をされていたのが印象的でした。

 元々島本先生は同人誌では漫画の描き方、とりわけストーリーの組み立て方について熱く語っておられた方で、実は物凄く技巧派な方なのです。熱いノリとテンションでやってるような印象持ってる方多そうですが、実はそんな事もなく、技術的なお話をさせたらきっと一晩中語ってそうな方(これは個人的印象)だったりします。
 対する藤田先生はどうかというと、実はこれもまたその場の勢いで話を考えるような人ではなくて、以前にも「キャラクターが勝手に動くというような事は自分の作品ではほとんどない」というような事を仰っていたので、もちろん同様のタイプなのです。
 まあ、長年プロで活躍されている方でいつも何となく描いてますよ、なんて人はそうそういないと思いますけども(それで長年プロでやっていけるのは一握りの天才でしょう)。

 特に最初に書きましたし藤田先生も(レポート漫画で)言及していましたが、先手が有利という点はルールを考える必要があるのではないかと思いました。ルール関係は最後に書く事にします。
 
 ちなみに一方的に島本先生を擁護するような形になってしまいましたが、先生の「漫画力を競うのならば絵の部分で点数を稼ぐのはどうだろう」という意見について少し考えてみます。
 あくまで漫画としての対決なので、やっぱり絵についても点数が付くのは仕方がない所でしょう。ネーム対決ではないので、コマ割や構図などの演出も、絵のテクニックも、全てを漫画の魅力として捉え、限られた時間の中でいかに効果的に魅せる画を作れるかというのも、またれんまん!の審査対象として入るべき内容だと思います。キャッチーな部分を意欲的に取り込んで作画した藤田先生は、そういう部分までも事前に考えていたという訳で、これもまた素晴らしい事だと思います。

 とにかく今回は全編通して名勝負なので、漫画を描く人なら一度は観て自分なりの勝敗を判定して欲しいです。そして全編ノーカット、お二人によるオーディオコメンタリー付きのDVDとか出して下さい。最後は小池先生による解説付きとか。

 さて、ルールに関して少し考えたいと書いていたので書いておきます。
 
 先手側は世界観やストーリーを提示出来るために、それ以後の展開をかなり縛る事も可能になるため、先行して考えなければならないという苦労を考えても結構な有利さがあるのではないかと最初は思ったんですが、これ、状況に左右される気がします。
 今回はストーリー漫画の対決でしたが、ギャグ漫画の場合は逆に相手の展開をどう潰すかという勝負も可能だし、返し技を駆使するタイプならあえて後手に回るのも戦略の一つかもしれません。

 れんまん!は競技として独特なので、独特の技が生まれてくる気がします。
 例えば「1コマ目の登場人物を2コマ目で殺す」「前までのフリを全部夢オチで白紙にする」などの、流れを破壊する技や、「演出コマを描いて話を進めず相手に回す」「前のコマのどれか一つの台詞を強調するだけで相手に回す」などの受け流し技(よほどうまくやらないと判定不利だろうけど)も面白そう。多分最初にやった人の名前が付きます。「島本返し」とか「藤田式夢オチ」とか。
 上記の技はどれもギャグ漫画でないと評価下がりそうですけども。

 同人界隈でもれんまん!が流行らないものかなーと思います。絵チャットとかあるし、あれにタイマー着けて書ける人を制限すればオンライン(デジタル)れんまん!も可能かもしれないし。もともとリレー漫画って昔よくあったよね。
 色々と可能性の広がりそうな競技なので、みんなも観ると良いし遊ぶと良いと思いました。最後だけ小学生の作文みたいになりましたが、とりあえず面白かったので勢いだけで感想か来ました。
    21:03 | Trackback : 0 | Comment : 2 | Top
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2013.08.28 Wed 10:12  |  015 #-
他の人ならどうなんだろう?と気になったので
次の週のしりあがり寿VS安孫子三和も見てみたんですが、
後手のしりあがり寿が「2コマ目で1コマ目をぶち壊す」をやってました。
「1つ目のコマを見ずに2コマ目を描く」っていうなんかすごい作戦で。
結果的に、後手が先手を振り回す形になって
島本VS藤田戦とは違った流れになったのが面白かったです。
あとあんなに喧嘩腰じゃなかったw
  [URL] [Edit]
2013.09.01 Sun 22:25  |  ヴァ #-
やってましたなーぶち壊し作戦。やっぱり作家によって全然作戦違うものですね。
島本先生たちのほうは、番組側から「あまり仲良く見えないようにして欲しい」と要望があったそうで。結果的には仲よさそうにしか見えなくなってましたけども。
そして4タテで負けたのは島本先生と田中圭一先生だけらしいです。
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